[S&P] 三菱UFJフィナンシャル・グループの米ドル建て永久劣後債を「BB+」に格付け
(2023年10月16日、東京=S&P)S&Pグローバル・レーティング(以下「S&P」)は本日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下「MUFG」、「A-/安定的/--」)が発行を予定している米ドル建て永久劣後債を「BB+」に格付けした。本劣後債は日本の自己資本比率規制において、バーゼルIII適格のその他Tier1資本(以下「AT1」)として扱われる見込みである。
本劣後債の格付けは、MUFGのグループスタンドアローン評価(以下「GSACP」)の「a」を5ノッチ(段階)下回る。格付けの基点をGSACPとすることは、政府による特別支援の可能性がAT1債には及ばないとS&Pがみていることを反映している。この5ノッチは、以下を反映している。
- 1ノッチ:契約上の劣後性
- 2ノッチ:任意利払い停止条項によって、利息が期日通りに全額または一部支払われないリスク
- 1ノッチ:MUFGグループがストレス下にある場合や実質破綻状態となった場合に、元本削減条項に基づき、元本削減が生じるリスク
- 1ノッチ:発行体が持ち株会社であるため、その債権者は銀行の債権者と比較して構造的な劣後性を有していること
また、S&Pでは本劣後債の資本性を「中資本性」と評価している。これは、MUFGグループの自己資本水準が今後1-2年、引き続き安定的に推移するとのS&Pの見方を下支えするとみている。「中資本性」の評価は、本劣後債が以下の要素を備えていることに基づいている。
- 永久劣後債であり、規制上のTier1資本である
- ステップアップ条項がない
- MUFGの完全な裁量に基づく任意利払い停止条項によって、ゴーイングコンサーン・ベースで損失吸収が可能である
元本削減条項に基づく1ノッチの調整は、バーゼル合意に基づく日本の自己資本比率規制の下では、銀行がストレスや実質破綻状態に直面している場合に、AT1債の元本削減を通じた損失吸収が可能であることを反映している。S&Pはシステム上重要な銀行とその優先債権者に対して日本政府が極めて支援的と評価している。さらに、日本の銀行破綻処理制度の特色として、政府は、AT1債のベイルインを引き起こさずに銀行に予防的な支援を行う手段を持っている。そのため、システム上重要な銀行がストレス下にあり、政府が金融システムの安定性を確保するうえで支援が必要と判断した場合に、政府による当該銀行への特別な支援がAT1債にも及ぶ可能性があるとS&Pは考えている。ただし、政府がそのような状況が生じた際にどのような判断を行うかの事例はまだなく、AT1債が元本削減を通じて損失吸収する無視できないリスクを有することをS&Pは重視している。
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